地域を支える口のリハビリテーションの薦め
高齢者は加齢に伴い種々の生理機能(呼吸循環機能、消化器機能、 腎機能、免疫機能、内分泌機能、精神機能、運動機能など)が低 下し、予備能の低下をきたした状態にあると言えます。
その特徴として、低栄養状態(蛋白・エネルギー低栄養)に陥 りやすく、多病性・易感染性・難治性で、孤立的・抑うつ的にな りやすく行動範囲も狭く、閉じこもり傾向にあることが知られて います。何らかの原因(外傷や病気)で入院すると、容易に生活 機能の低下(廃用症候群)をきたし、合併症が起こりやすく、入 院が長期化する傾向にあるのです。
つまり、食を考えた場合、高齢者は潜在的に①味覚などの感覚機能を含む口腔機 能の低下が存在し、誤嚥を起こしやすく、②低栄養のために免疫力が低下している こともあり、③容易に肺炎(誤嚥性肺炎)を併発してしまい、④寝たきりになって しまうということを知る必要がある訳です。まして脳卒中などによる障害が加わる と口から食べる機能が大きく低下し、容易に胃瘻が作られ、口は放置されて廃用症 候群が進行し、ついには寝たきりとなり、人としての尊厳が損なわれていってしま うのです。
“口のリハビリテーション”とは「どのような障害があっても最後まで人として の尊厳を守り、諦めないで口から食べることを大切にする全ての活動」と定義しま した。具体的には①救急医療から在宅・施設支援にいたるまでの継続的な活動であ り、②3つの口腔機能(嚥下・呼吸・構音)を大切にする視点と③口腔ケアを基本 として、④多職種がチームとして関わることを重視し、⑤口のみならず、全身の廃 用症候群および誤嚥性肺炎を徹底して予防するというものです。20 世紀、多分野 にわたる医学の進歩によって、種々の専門分野が誕生してきましたが、残念ながら 口腔機能障害に対する専門家はほとんどいなかったように思います。
歯科は歯の専門家、消化器医は食道以下、呼吸器科医は気管以下であり、唯一耳 鼻咽喉科医が一部関わってきたと言っても過言ではないと思います。言い換えれば、 専門家が居ない領域だからこそ多職種による徹底したチームアプローチが重要とな るわけです。
口のリハビリテーションで大切なこと
①寝かせきりで廃用症候群を作らない。②正しい座位姿勢をとる。③たとえ経管 栄養であっても毎食後の口腔ケアを実施する。そして④摂食・嚥下訓練を実施。 この時⑤呼吸訓練・構音訓練も行う。⑥認知および味覚をはじめとした五感を大 切にする(食べたいと思うようなものを提供する)。⑦しっかりした栄養管理を実 施する。そして⑧チームとして関わり、継続性を確保すること
社団法人是真会 理事長
日本リハビリテーション病院・
施設協会常務理事