健康長寿をめざして口腔ケア
~看護師の立場から~
ナイチンゲールは、「看護覚え書」で「看護がなすべきこと、そ れは自然が患者に働きかけるのに、最もよい状態に患者をおくこ とである。看護とは、新鮮な空気、陽光、暖かさ、清潔さ、静け さを適切に整え、これらを活かして用いること、また、食事内容 を適切に選択し適切に与えること(生活にかかわる)などすべて において患者の生命力の消耗を最小限に整えることを意味すべき である」と述べている。
高齢者の口腔ケアは、1999 年、日本老年医学会雑誌に「老人性肺炎の病態と治療」 という論文が掲載され,新しい老人性肺炎の戦略として示された。その後、老年者 の呼吸器疾患の予防対策として口腔ケアが始まった。 北海道大学歯科診療センターにおける口腔ケア活動は、地域支援活動という形で地 域開業歯科医師の訪問歯科診療の後方支援で、大学病院としては全国で第一号であ る。1999 年に内規が制定され、地域歯科医師会、医師、訪問看護などと連携して 始まった。通常の歯科治療が困難な要介護高齢者や障害者、難病の患者さんが対象 であり、たくさんの難症例を受け入れた。高齢者の食べることを支援したい、寝た きり患者の口の中をきれいにしたい、障がい者の口をきれいにしたいなど、人間と しての尊厳を守りたいと考え、試行錯誤しながら、専門的口腔ケアを実施してきた。 地域支援医療部での看護師の活動は、開業歯科医師との連携で咬合を保ち、医師や 訪問看護師のほか、薬剤師、言語聴覚士、栄養士、家族、ヘルパー等が協力して患 者においしいものを食べていただく支援をすることであった。
在宅高齢者の口腔ケアは、チーム医療である。歯科医師にしかできない咬合を保 つことで咀嚼や嚥下を助けることと誰にでもできる口腔ケアで口をきれいにするこ と、食介護や嚥下食の調理指導をすること、複数の薬剤による口腔乾燥を予防する こと、口腔機能を低下させないことで患者のQOL を高めることである。歯科との 連携で適切な口腔ケアがなされていれば、患者は、最期まで食べ物を口にすること が出来る。
この経験から、健康長寿は、市民が自分の口の健康は自分の手で守ることである と考える。そのためには、歯科は、情報公開すること、市民と看護職は、もっと歯 科ができること、歯科にしかできないことを知ることである。口の健康を守るため にかかりつけ歯科医の機能を生かし、口腔ケアの地域連携システムを稼働させるこ とで市民の口の健康を守ることは、もちろん、歯科がチーム医療の一員として有病 者や要介護高齢者、障がい者等の口腔環境を改善し、誰もが安心しておいしいもの を食べて健康長寿を全うできる地域を作っていきたい。
札幌市立大学看護部看護学科
老年看護領域講師